健康格差 第9章(福井👓チーム)
8/7 (火) 13:00~
鈴木・加藤・蓑島(みのしま)
今回は岐阜の蓑島さんも加わり3人で行った。
公平な社会
【第1節】
ハイチ・チリ、アメリカ・イギリス、南アジア、東西欧州、中南米、日本等の国が例として取り上げられ、健康状態の明暗について紹介された。
比較された国々の歴史的な違いは健康格差に影響していないだろうか。
【第2節】社会ー右と左
イギリス政権の風刺、チリのピノチェト軍事政権等の例を挙げ、右や左に傾くと良好な健康を維持できないとしている。
『私たちに必要なのは、「〇〇主義」の旗を振ってバリケードに乗っかるよりも、個人の権利と公共分野の要請のバランスをどう取るかについて、根拠を検討することだ。』(p.260 l.5)
【第3節】学ぶ
うまくいっているものの例としてスウェーデン、うまくいってないものの例としてアメリカが挙げられ、良好な健康状態の理由を解説している。
・対象を絞る、資産調査付きの選別的政策ではなく、普遍的な社会政策(p.262 l.4)
最下層をターゲットにするのではなく、中間層も、最上層をも包摂した政策が必要だということだろう。
【第4節】お金と他の重要なこと
これまでお金以外の要素を解説してきたが、お金ももちろん重大な要素だ。
【第5節】世襲資本主義ーピケティ・スタイル
ピケティは「問題は、資産と所得の不平等の拡大と、将来、資産の多くは労働よりも相続によるだろうという事実。」(p.267 l.5)「所得の集中が米国経済を不安定化させた」(p.268 l.7)
「所得分配の最下層から最上層にお金が移動することで、消費が減退する。」(p.269 l.12)
その結果、総需要の減退は失業を生み、失業は不健康を引き起こす。そして更に不平等が増大すると思われる。
【第6節】社会の不平等は健康の不平等につながるーお金は重要だ
・・・なぜなら、お金は貧困層の貧しさを緩和するから
所得と資産の不平等は、健康の不平等につながる。
富裕層が所有しすぎれば、それ以外のすべての人は所有しにくくなる。
上位層1%は富の生産者であるから、取り分を増やしても問題ない。のか?否。
IMF「正味の不平等の削減は、より速くより永続的な成長と強く相関する。」(p.271 l.1)
不平等の削減は経済成長に欠かせない。
・・・なぜなら、お金は生活の改善に使えるからだ
「富裕層は課税に対して不寛容だ。」(p.277 l.11)
自分にプラスにならないと感じているからか。
比較的普遍主義
格差の削減といっても最貧困層だけに焦点を当てるのは危険である。
万人に普遍的な社会政策が求められる。
・・・なぜなら不平等は社会の結束を傷つけるからだ
格差はどの段階でも存在するが、初等教育しか受けていない人々より大学教育を受けた人々の方が格差の程度がはるかに小さい。
不平等は、富裕層の健康よりも貧困層の健康をより害する。
社会的、経済的な不平等が大きいと、貧困層・中間層・富裕層が違う世界に住むようになる。
学校、世帯構成、移動手段、スポーツジム、休暇、態度etc…を分離していく。
【第7節】社会階層と健康の関係は所得をはるかに超える問題だ
ヒヒと公務員という霊長類において社会的ステータスによるストレスマーカーの値を比較した。それはいずれも社会的勾配を示した。
意外であったのは、歴史的な事由により、オスの50%が殺されたヒヒの集団が社会階層に関連した攻撃的な行動が抑えられ、身づくろいのような親和的な行動が多く出現した、「思いやる」集団になったことだった。その集団はストレスマーカーも高くなかった。
「おもいやり」文化を自称する日本と比較すると、ヒヒの集団におけるオスの50%が殺されたのと同じような歴史的事象として、戦争が挙げらるが、戦前の日本が想像でしか語れないため、参考程度とした。
【第8節】社会の健康度も所得を超える問題だ
「何を持っているかは健康にとってそれほど重要ではないが、持っているもので何ができるかは重要だ」(p.284 l.2)(⇒第1章 ジミーとギータ)
国民所得が比較的低いにもかかわらず、良好な健康状態を達成している、キューバ、コスタリカ、チリを紹介している。
1955年にキューバの平均寿命は米国より10年短かったが、2011年に両国の平均寿命は同じになった。
同じような劇的な健康の改善がコスタリカ、チリでも起きている。
貧困対策、就学前教育や教育への高い投資、医療の提供を含む普遍主義的なアプローチが良好な健康状態を達成している要因なのではと筆者は推測している。実際にはわからない。
「なぜ1%の人の所得の暴騰を許容するのか」(p.287 l.12)
【まとめ】
・社会的結束(ソーシャルキャピタル)は大切なのだと思った。(簑島)
・普遍的な社会政策が必要である。
・お金は重要だが、使い方がより重要である。うまく使えないならば、やはり行政の介入が必要なのではないか。
・資産の集中の問題に関しては、私たちではどうすることもできないかもしれないが、資産の集中が健康の不平等を作り出すことは知っておかなければならない。
・(p.268 l.3)1928年にトップ1%は総世帯収入の23%を稼ぎ出していた。その後1929年世界恐慌。
2007年には再びトップ1%が総世帯収入の23%を占めていた。その後2008年リーマンショック。
何か因果関係があるのでは。
日本に置き換えると、バブル崩壊前はどうだったのだろうか。
・「公共政策と個人の自由の間で論争が続いており、後者こそ経済的成功への道だとみなされている。」(p.258 l.8)
「今、世界のこの地域のほとんどの国が自国民を制圧するために軍隊を持っていますが、私たちは教育や医療にお金を投資しました。」(p.286 l.6)
以上の”個人の自由”と”自国民の制圧”の2つはどこか関連しているように感じる。
【次回】8/14(火)13:00~