健康格差 11章
担当:小西
副題は「希望の仕組み」です。本書全体を振り返りつつ、医療者ができること・やるべきこと、よりよい社会とは何か、が語られています。
◼︎ポピュレーションアプローチで「山」を動かすための三つの柱
◼︎市民がSDHに取り組んでいる例:消防士
生活の困窮を背景とする火災
80歳のディビッドさん。彼は暖を取ろうとしてごみを燃やし、消防隊が出動するという事態がよく起こっていた。
火災リスクに対する予防活動として、ある消防士が、服とクリスマスディナーを届け、扶養者となる妹を探し出すという行動を行った。
本人の生活が改善され、火災が起こらなくなった!
消防士が火災の「原因の原因」にアプローチした!
マーモット「健康も火災も社会的勾配に従う」
◼︎政府がSDHに取り組んでいる例:スウェーデン自治体、イギリス
スウェーデン自治会
<社会的に持続可能な自治体づくりに関わる計画>を打ち出している。
イギリス
各地方自治体に「健康と福祉」委員会がある。
地方自治体の4分の3が最優先事項「マーモット原則」に従っている。
How much progress has been made since the marmot reviewより
◼︎医療専門職の役割
健康の主たる決定要因は医療システムの外にある。
「人々の健康を改善すること」が医療者の使命であるならば、
医療者には、病院で治療をすることに加えて、社会における健康の不公平を減らしていく責務もある。
ウィルヒョウ「医師とは本来貧しい人々の弁護士である」
◼︎いまSDHが熱い!
『一世代のうちに格差をなくそう』報告以来、SDHという考え方はどんどん広まってきた。
2011年には、第1回世界SDH会議がブラジルで開催された。
この会議には、120か国、60名以上の保健大臣が参加した。
これまでの国際会議は、「特定の感染症の制御」や「医療システム」といった個別的なテーマで開かれていたが、この時、SDHが新しいテーマに加わった!
権力や経済の不公平が生活の不公平と健康の不公平につながるという認識が各国の大臣レベルまで浸透してきた!
◼︎現代は最良の時代であり、最悪の時代でもある
最良の時代:全世界的に平均寿命が延び、乳児死亡率は低下し、初等教育は保障されるようになってきた。
しかし……
ジニ係数の上昇=所得の不平等
経済的、社会的不公平と健康の不公平の拡大
→権力、資金、資源の不平等が健康の公平を妨げている。
これらはトリクルダウン経済が失敗していることを示す。
マーモットの提案
経済成長への近道は所得の再分配。貧困層がお金を持てば経済は活性化する。
平等性は経済成長につながる! 健康の社会的勾配にもつながる!
◼︎よりよい社会とは「健康水準が改善していき、健康の不公平が少ない社会」
・「健康と健康の公平性」それ自体に価値がある
・健康の公平性はよい社会の指標になる:健康の不公平が少ない社会は、乳児死亡率が低く、教育が充実し、労働環境が整っている。これらは人々が社会に望むことでもある。
<持続可能な発展>の条件として“経済、社会、環境”の三つの柱が大事と言われるが、これらは健康にとっても大事。
◼︎本書全体で伝えたいメッセージ
物質的・心理社会的・政治的無力化が健康を害する。健康の不公平性につながる。
一人ひとりが何かしよう。人々の生活をよくする変化を起こしていこう。