つどいThird Quarterを振り返って

東海大学 3年 楠瀬萌子 

 

今年度のつどい事務局メンバーとして活動しています楠瀬萌子と申します。12/23~24に湯河原で行われたつどいThird Quarterについて振り返りたいと思います。Third Quarterはクリスマスイブにかかったこともあって、参加者少ないかなあ、と思いきや、学生100人超えだったそうで、びっくりしました。

 

またフレッシュな顔ぶれもちらほら見られて、新鮮な感じのつどいでした。今回のつどいのテーマは『SDH』です。マイケルマーモット氏の『健康格差』という本が課題図書としてあがっており読んできた人はたくさんいたようです。

開会式後、学習企画では順天堂大学教授の武田先生によるSDHに関する講演が行われました。先生は筑波大学から米国に臨床渡米、さらにはアフガニスタンやイギリスといった国際経験を通して、ヘルスプロモーションに力を入れていらっしゃる先生です。SDHの問題は国内だけに止まらず、国外でもおおきな問題になっています。特にイギリスは地下鉄の駅一駅行くごとに平均余命が1年減少するほどの格差が生じているそうです。健康な状態とは、WHOが定義するように、「身体的精神的社会的に完全に良好な状態」ですが、その社会的な側面に焦点を当て、患者さんの病態が生じている社会的背景に目を向けようとするのがSDHです。武田先生のご講演の中では、そんな健康格差が激しいイギリスやアメリカでの移動クリニックや医学法学パートナーシップ、Health Leadsなどの取り組みの紹介から、医師に求められる6つの能力について、医学教育でSDHをとりあげることの必要性について具体的事例や先生のゼミの学生による活動報告にわたりお話していただきました。医者には病気を知るだけでなくその患者さんがどんな困難をかかえているのか背景を紐解く必要があるのです。しかも、そのSDHは医学教育のカリキュラムにも組み込まれており、国試でもよく出るところになっています。まさに医師として現代社会から求められる“能力”と言えるでしょう。

 

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医師に求められる6つの役割

専門家、研究者、健康に関する啓発活動家、リーダー、協力者、コミュニケーター

 

先生の話の後に、青森健生病院研修医の飯田和貴先生のお話を聞きました。先生が今担当されている実際の症例に基づいてSDHの視点の重要さを知りました。その患者さんは他の患者さんとの騒動、勝手な理由などで入退院を繰り返していたそうです。一見迷惑な患者だな、と思われがちな人だと思いますが、その方は中卒で専門学校を出たのちしばらく家族の家計を一人で支えていて、その後生保を受け取っていました。なぜこの患者さんは暴力的な行動を繰り返し、入退院を繰り返していたのか、とても考えさせられる症例でした。

SGDでは、健康を阻害、促進する要因を書き出すことをやりました。それに基づいて健康、SDHの本来の意味、学生がどう関わっていけばよいか、話し合いました。私の班では健康の阻害要因として、もちろんお酒やタバコ、ストレスなども挙げられましたが、そんな中、ある学生が「ネコ」というwordを書いてきて、「これは阻害、促進どっち?中間じゃない?」って話で盛り上がりました。

夕食を食べたあと交流会が行われました。交流会では学年別、テーマ別交流の2本立てでの交流でした。テーマは前回とは一新して、ジェンダーの話や一人暮らしあるある、お国自慢など、ちょっと変わっているけど初参加者にも話せるテーマが多かったものとなっていたと思います。初参加者の人も結構楽しかったと言ってくれていました。

 

2日目、研修企画では立川総合病院の山田秀樹先生による新専門医制度のご講演がありました。国としては地域包括ケアシステムを担う総合医を求めようとしているのに対し、専門性を高めキャリアを積み上げようとする風潮、制度とのギャップ。私はそこに疑問を感じました。

大切なのは、後期研修医で専門をとるかとらないかではなく、専門的知識を身につけながらも研修の内容がいかに充実したものなのか、健康格差や患者さんの社会的背景にも目を向けられるように総合力を身につけられる研修ができるかどうかだとわかりました。やはり、ここでもSDHの重要性を確認しました。SGDでの話では専門医をとることは大事だし、取った方がいいということには変わりないが、今の時代に対応していくには、例えば食道の内視鏡専門医が小児を一切診られませんというのは通用しなくて、専門を取りながら、別の領域も携えられる能力が重要というお話を広島の病院の先生が話してくださいました。

 

次回の沖縄でのつどいは沖縄独自に抱える基地問題、後を絶たないヘリコプターの墜落事故、米軍犯罪を元に、地域特有の問題についての勉強を通してそれらを自分たちが将来働く地域の問題解決にどういう風に還元していくかを考えることになると思います。今年のテーマである、医師の使命について深い議論になるといいなと思います!

 

#管理者注:医学生のつどいとは、年に4回、医学生が主体となって、今日本で何が起こっているか、医療には何が求められているか、自分はどんな医者になりたいかなどをともに学び・考え・交流する集まりのことです。