動画で学ぶ「健康の社会的決定要因」

私が医学生になってびっくりしたことの一つに、医師国家試験の予備校がしのぎを削ってネット講義を配信しており、ほぼ全ての医学生がそれらを視聴しているということがあります。教育の均てん化という点において案外と大きい効果を持っているんではないでしょうか。

Youtubeに目を転じてみますと、臨床医学についていえば肘内障の整復動画、PSVTに対する修正バルサルバ法の動画(Lancetが配信!)までありますし、医学を離れますと深海魚のさばき方から不完全性定理の証明の仕方まで、大概のことが動画でカジュアルに勉強できます。

というわけで、現代文明の恩恵にあずかり、本ブログの「健康の社会的決定要因」について勉強できそうな動画を集めてみました。気になるものがあれば、今夜布団で寝っ転がりながらスマホで観てみましょう!

■Social Determinants of Health -an introduction


Social Determinants of Health - an introduction

SDHについてよくご存知のかたも、なんとなく知ってるけどうまく説明できないなという方も、一見の価値ありです。非常に手際よくまとめられています。WHOのSDH専門委員会がまとめたframeworkに沿っています。同じように順序よく図を描いてみると、他人に平易に要領よく説明できるようになりそうです。5回描けばいつでも描けるようになりますね。

  

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■健康の社会的決定要因 クレア・ポロメイ


Social Determinants of Health: Claire Pomeroy at TEDxUCDavis

TEDでもHealth inequalityは人気の演題です。それだけ社会的注目度が高いテーマなんですね。この動画は格差大国アメリカの統計資料をさまざまに示していて勉強になります。

 

■リチャード・ウィルキンソン「いかにして経済格差が社会に害を及ぼすか」

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『The Solid Facts』をM.Marmotといっしょにまとめた人物です。健康状態に社会経済的な勾配があること(=健康格差が存在すること)に加えて、「社会格差自体が健康に害を及ぼすこと」にまで踏み込んで論じています。

 

■近藤克則「社会経済的要因による健康格差」

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亀田総合病院の地域医療講座シリーズのひとつです。日本のデータをもちいて所得と健康の関係について解説しています。「心理社会的環境に配慮しない健康教育や行動変容アプローチは健康格差を縮める役には立たない」という重要なポイントが押さえられています。同講座内の猪飼周平「地域包括ケアの歴史的必然性」も厚生省が進めようとしている地域包括ケアの落とし穴について語られており必聴です。

 

■熊谷晋一郎「マイノリティの健康格差:障害・スティグマ・言語」

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ちょっと長いですが、大事なので。脳性まひの当事者で小児科医の熊谷晋一郎先生の講演です。SDHが集積しがちなマイノリティの健康格差について語られています。本講演では触れられていませんが、性的少数者においても、うつ病、薬物依存、自殺企図のリスクが一般人口よりも高く、スティグマ社会的排除の関与が多くの論文で示唆されています。

文章で読みたい方はこちら:第7回JAMSNET東京講演会「医療アクセスの壁を超え、国の境界を超える未来の医療」レポート | メディカルノート

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あと、もう一つ。マーモットレビュー10周年を記念して来年進捗まとめ論文が出るらしいです。楽しみですね。

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