子ども食堂フォーラム

名古屋大学 新2年の田上陽菜です。2月16日(金)に行われました「子ども食堂フォーラム」で学んだことをご報告したいと思います。このフォーラムの前半は社会活動家である法政大学教授の湯浅 誠 氏による「子ども食堂のすすめ」と題した講演で、後半は子ども食堂の実践事例報告を中心としたシンポジウムでした。

1. 子どもの貧困について
日本では子どもの7人に1人が相対的貧困にあると言われています。私はこのことを聞いて、貧困に苦しむ子どもはこんなに多いのかと驚きました。会場に集まっていたのは、子ども食堂の活動に携わっている方や関心を持っている方がほとんどでしたが、それでも約6割の方が私と同じように感じたようです。

このように、子どもの貧困は明らかに目に見えるようなものではありません。しかし、家計を助けるために進学を諦めざるを得ない、アルバイトで疲れて勉強に集中できない、友達といるとお金がかかるので一人でいる、修学旅行に行けない、などの高校生の声をまとめたスライドを見て、子どもの貧困は確かにあるのだと感じました。

湯浅先生は相対的貧困という状況を黄信号にたとえておられました。相対的貧困状況とは、赤信号(貧困により思い詰めて自殺を図るなどの問題が表面化した状態)に至る前の段階であるという考え方です。赤信号にだけ目を向けていると黄信号に気付きづらくなり、問題の解決には至りません。7人に1人という割合を受けて、黄信号に気付くことが大切だと思いました。

 

2. 子ども食堂の意義
子ども食堂は子どものためだけの食堂ではなく、地域づくりの場でもあります。実際、埼玉県では子ども食堂の8割が「どなたもどうぞ」というスタイルで運営されているそうです。

様々な人が集まることは、地域づくりに繋がるだけではなく、子どもの可能性を広げることにも繋がります。多様な体験をした多様な人々と交流することで、子どもたちの価値観が広がり、将来の選択肢も増えるからです。例えば、両親とも大学に行っておらず、自分も大学とは無縁だと思っている子も、スタッフとして子ども食堂へ来た大学生と交流することで大学に通ってみたいと思うようになるかもしれません。

このように、子ども食堂で子どもたちと交流するだけでも支援になっているという考え方を、湯浅先生は「いるだけ支援」と呼んでおられました。この話を聞いて、『健康格差』にある「エンパワーメント」と通じるところがあると感じました。

 

3. 「わいわい子ども食堂」の実践事例報告より
わいわい子ども食堂は北医療生協 すまいるハートビル2階「わいわいルーム」で月1回行われています。

コンセプトは「子ども一人でも入れる食堂」「誰でも歓迎の食堂」で、ボランティアも利用者もみんなが緩やかに繋がり、居心地のよい場を目指しているそうです。

開設当初、子どもの参加費は200円でしたが、持ってこられない子どももいることを受け、2017年4月から子どもは無料で参加できるようになりました。参加者は小学生が60~70人、中学生が数人、大人が30人前後という大規模な子ども食堂です。

メニューは野菜を中心としており、家では食べないものも子ども食堂では美味しそうに食べる子が多いそうです。また、家で果物を食べない子が多いことから、旬の果物を必ず出しているそうです。お腹も心も満たされる居場所にするため、食事の提供だけでなく、折り紙や紙芝居、歌などの活動も行っています。

 

わいわい子ども食堂を運営されている方々の悩みを知ることができました。
まずは、財政的基盤が不安定だということです。使用する食材などは寄付に依存する部分が多く、持続可能性を高めることが課題です。お金がかかるのは食材だけではなく、食中毒を防ぐためにたくさん使用する消耗品や、何かあったときのための保険に加入するのも高額です。

こうしたことから、行政と連携して補助金を受けられるようにしたいと考えておられるそうです。しかし、補助金を受けるために行政から細かい規定を設けられ、自由な活動ができなくなるのは避けたいという思いもあるようです。

また、学校との連携も難しいとのことです。何かあったときに責任をとることができないという理由から、学校側はチラシ配りなどに消極的だそうです。

こうした課題を解決しながら、子ども食堂を広め、誰でも集まれる居場所が小学校区ごとにあれば素晴らしいなと感じました。

 

4. 「子ども食堂にっこにこ」の実践事例報告より
子ども食堂にっこにこは運営メンバーの一人の自宅で月1回行われており、子どもは無料で参加できます。参加者は30人前後と、小規模な子ども食堂です。季節を感じるメニューを提供し、食後は様々な活動を通して交流しているそうです。
悩みとしては、参加人数に波があり、食材が余ったり足りなかったりすることや、ボランティアによる運営のため、人手不足にならないよう予定をすりあわせるのが大変、といったことが挙げられます。
子ども食堂にっこにこは学童保育のOB仲間5人で始めたということで、これから子ども食堂を始めたいと考えている人へのエールを送られていました。他の子ども食堂を見学し、とにかく始めてみようという気持ちで取り組むことが大切だそうです。やりながら改善点を見つけ、よりよいものにしていくと良い、とのことです。

 

5. 最後に
このフォーラムに参加して、子どもの貧困について学び、子ども食堂の意義や実際の課題について知ることができました。学んだことを頭に置いて、子ども食堂の活動に参加し、子ども食堂をより良くするための方法を考えたいです。

 

先日、わいわい子ども食堂に初めて参加させていただきました。その日は大盛況で、たくさんの参加者さんが楽しくご飯を食べたり、遊んだり、おしゃべりをしたりしていました。フォーラムでもあったように、子どもたちがご飯を食べに来るためだけの場ではなく、お母さん方が交流できる場であったり、子どもたちが様々な体験をすることができる場であったりと、子ども食堂の役割は数多いなと実感しました。

それと同時に、子ども食堂を運営する大変さも垣間見ることができました。大人数の食事を準備し、食べ終わった食器を効率よく片付けるには工夫が必要で、こうしたい!と思っていても手間を考えると難しいということもあるのだと知りました。

これからも、子ども食堂をより良くするためにできることを考えながら活動に参加したいです。

 

参考サイト

news.yahoo.co.jp