レビュー:『未来が変わる働き方』(慎 泰俊)

最近読んで面白いなーと思った本を軽く紹介していきます。こういうのは雑に書いて後で仕上げるのがコツです。Done is better than perfect。

 パートタイム・ソーシャルアクション

今回紹介しますのは、『未来が変わる働き方』(慎 泰俊)。

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著者の慎泰俊さんは、本業の外資系金融業の傍、国内外の貧困問題に取り組むNPO:Living in Peaceを運営されている方です。LIPは、国外ではカンボジアベトナムなどで貧しい人々の金融アクセスを拡大するマイクロファイナンスファンドを設立、国内では児童擁護施設向けの寄付プログラム「チャンスメーカー」の実施や子どもたち向けにキャリアセッションを行うなどされています。マイクロファイナンスの方では総額1億円を超える投資が行われ、チャンスメイカー事業では児童養護施設の新設や改築に貢献できたそうです。すごい。 事業に関連したイベントやフォーラムも企画されていて、去年社会的養護を考える系の話を聞いてきたんですが、関係者から大きな注目を浴びていました。その時の資料:社会的養護の全体像_2017-11-22.pdf - Google ドライブ。めっちゃまとまってます。LIP公式サイトはこちら。

livinginpeacetop.wixsite.com

 

このLIPという団体の素敵な特徴は、メンバー全員が本業を別に持っていて、平日夜や休日にパートタイムで・世界の貧困を削減することをミッションとして動いていることです。例えば、銀行員、商社マン、プログラマー、弁護士、会計士、秘書、通訳などいろいろな職種の人が、フルタイムの本業をもち、本業で得たスキルを持ち寄り得意を活かしながら社会貢献活動をされています。経費は出るけど給料はなし。「ロハ? そんな善意頼りでええのん?」と思う方もいるでしょうが、メンバーはそれぞれ自分の仕事で生計を立てていて好きでやっているのでいいのです。会社で働きながら休日には音楽活動をするような感じでNPO活動をしているそうです。

 

『未来が変わる働き方』では、LIP設立と運営の経験から、働きながらソーシャルアクションを起こすためのヒントーー自分が情熱を注げるアクションを見つけるには?、どんなアクションをする?、どうやって信頼できる仲間を作る?、どうやって組織を運営する?ーーを説き起こしています。

 

我々が医師の仕事を始め、日々に忙殺されながらもSDHに取り組む際に、本業の臨床のなかでできることはもしかしたら限られているかもしれません。が、仕事の枠外で、医師免許を持つ一人の市民、一人のパートタイマーとしてできることはもっと広いかもしれません。 この本はどんな働き方ができるか考えるいい素材になると思います。

 

パートタイム組織のつくり方、動かし方

個人的に興味深かったのは組織運営のところで、「自分たちが何者なのか一言で語れるようにする」、「組織の理念と個人の動機をつなげる」、「とことんオープンにする」あたりがいいなーと思いました。

 

自分たちが何者なのか、ポジションをはっきりさせておく。そうすると、組織としてブレにくくなり、興味を持っている潜在的な仲間に覚えてもらいやすくなり、サービスやモノを届けたい相手に自分たちを知ってもらいやすくなる、という利点があります。このポジショニングには、良い悪いがあって

いいポジションとは:

  1. ピンとくること
  2. 誰もやってないこと
  3. 必要とされていること
  4. 自分たちが得意なこと
  5. 具体的なこと

だと、著者は言います。全て満たせるとたしかに強いですよねえ。

脱線ですが、自分も投げ銭しているメンヘラ.jpさんの「全国の自助グループ、支援団体等のデータベースを作りたい!」というクラウドファンディングは以上の5条件を満たしているような気がしますね。お金がある人は寄付よろしくお願いします。脱線終わり。

camp-fire.jp

 

そんな明確な旗印のもとにわざわざパートタイムでやろうと集まったからにはお金以外の動機を持っているはず。人の役に立つことがしたい、輪に加わりたい、自分を高めたい、自己実現したい、など。そういった欲求と組織的な動きをうまくつなげるために、例えば、コミュニティとしての機能を持たせたり(「大人のサークル活動」)、相互に学び合い教え合う場を作ったり、実際に大きな仕事を分担して進めたりする。メンバーが何を求めているのか把握することはボランタリーな組織には必要なことですよね。使命感・正義感が満たされるような企画をするのも、こういった「工夫」の一つなんだなと思いました。個人の動機を束ねて組織の道筋に配置することで有効なアクションを作っていくことができるわけですね。

 

また、大体の組織は分裂・消滅するものですし、それを見越して最初から対策を打つ必要があります。LIPでは、情報共有を徹底し、個人メールは基本禁止だそうです。オープンで話すことは、それ自体として民主主義的でよろしいですが、分裂防止のためにも大事だと言っています。人間をよく知っている感じがしますね。

 

他にも、ビジネス書的な内容:「自分が心血を注げる<価値>の見つけ方」「一石二鳥になるタスクの組み合わせを考えろ!」とか「集中力を高めるタイマー訓練法!」とか明日から使えるハウツーも書いてあるので、楽しく読めます。

 

行動したい、どんな行動をすればいいだろう?、どうやって行動すればいいだろう? というひとにおすすめです。

(東)