健康格差 第6章

担当:天久

 ■ なんのために仕事をしますか?

我々は第一には賃金を得るために仕事をします。賃金以外にも仕事は、社会的地位をもたらし、アイデンティティ確立の助けとなり、ライフコースにおける安心感を得ることができるなど、様々な点で人にエンパワーメントをもたらすという効用があります。一方で、過労死が問題となるように、仕事にはマイナス面もあります。何が仕事のダークサイドを強め、どうすればそれを変えられるのでしょうか?

■仕事と不健康

・夜間に倉庫で選別係の職に就くアランの例(p.171)

劣悪な労働環境は健康の不公平の原因となることは誰でも知っています。どんな仕事が「劣悪で」「有害」になりうるのでしょうか?

これまでの実証的研究で

  1. 肉体的重労働
  2. 要求の割に低い裁量
  3. 低い見返り(低賃金)
  4. 職場内での孤立
  5. 不安定雇用
  6. 組織的不正義
  7. 交代制勤務
  8. デスクワーク

のような条件が、健康へ悪影響を及ぼすと言われています。

 

失業は健康に悪影響であり、かつ労働環境と雇用条件も健康を左右する

社会的状況によって生じる悪い雇用条件…

  1. 労働組合の組織率の低さ
  2. 他の雇用がないこと
  3. 情け容赦ない利潤第一思考
  4. 悪条件を許容(助長)する社会

 

・インドで排泄処理に従事するラルタの例(p175)

人間汲み取り機のストレス

身体的生物的危険、尊厳の喪失、傷つけられる自尊心、低賃金

 

社会階級による仕事の不公平な勾配、インフラの未整備

⇓ 変えられる労働環境

NPOスラブ・インターナショナルの介入による下水道の導入と再訓練

 自尊心の獲得、賃金の増加

 

ベルナルディーノ・ラマツィーニ(イタリア人、労働医学の父、著『働く人の病』)1700年

労働の現場へ足を運び、階級を超えて労働者・患者と対話することで職業病を明らかにした

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#目次見るだけで楽しい。「穀物を篩にかけ、計量する人の病気」ってなんだろう。「油絞り職人、皮なめし職人、汚物を扱う人々」ってなんでまとめられてるんだろう。 

 

■権力・資金・資源の不公平

・失業

各国若者の失業率

スペイン

ギリシャ

イタリア

日本

失業率

58%

60%

40%

5.4~10%?

 

政府の政策が効果を発揮できる…社会的保護への予算拡大で左右される(p190)

 

・失業を放っておくと自殺率が高まる

社会的保護への支出

なし

東欧諸国 37㌦/1人

西欧諸国 150㌦/1人

失業率

3%上昇

3%上昇

3%上昇

自殺率

3%上昇

2%上昇

1%上昇

 

・雇用破壊か創出か

大不況における経済救済についての見解はイデオロギーの違いと相関する

(右)経済成長のために国の債務を削減する ←支出を抑えて赤字を減らす(緊縮財政)

(左)国の債務を削減するために経済成長が必要 ←支出を増やして景気を刺激(ケインズ主義) 

*緊縮経済が経済成長を減速させる効果を持つという根拠が登場しつつある。

 

マ)経済成長だけに終始せず、政策が健康にどう影響するかも評価すべき。

 

■マとめ

・仕事は健康を左右する。不安雇用や失業は健康を害する。

・仕事の「良い特性」は社会的勾配に左右される。社会階級でも国家間でもそれは移転する。

・労働生活は変えられる。

・問題を強調することが対処につながる。