SDHスクリーニングの問題点

 F氏からこれ面白いよと紹介があった論説を軽くまとめました。これ。

 

タイトルは「SDHスクリニーングの予期せぬ害を避けるには」。

 

 住が不安定であるとか食が不適切であるといったSDHを医療の場でスクリーニングにかけることは、一般的な身体の状態(血圧とか骨粗鬆症の進み具合とか)をスクリーニングにかけることと、根本的に性質が異なっている。後者については医療の場で不具合が見つかればその場でクリニカルに対応することができるが、前者は医療の範疇を超えているため出来ることが少なく、患者の利益に資することがないかもしれない。ただスクリーニングにかけて、「そうですか、食に困っているんですね。調査に加わっていただきありがとうございました」では倫理的にダメ。そのため、スクリーニングを事業としてやる場合、包括的な地域支援システムの中で、医療以外の機関と緊密な連携をとって、患者と共同意思決定をしていくことが必須である。

 また、医師や医療関係者が、失業したとか家庭内で暴力があるとかいうセンシティブな問題をルーチン的に聞き取るとすれば、患者を不用意に傷つけてしまうかもしれない。医師が「この人は社会的階層が低いからきっとこうだろう」という色眼鏡で患者を見てしまったり、偏見を持っていないつもりでも患者からすると偏見を持っているように見えたりすることで、医師患者関係に不都合が生じるかもれない。よって、SDHスクリーニングを適切に・効果的に施行するための原則作りとトレーニングが必要である。特に、患者や家族の強みや保護因子に目を向けるストレングスモデルを学ぶべきである。

 

 #感想

・某日産婦人科の実習をしていた際に、若い妊婦さんが「経済状況についてしつこく聞かれた。十分にやっていくお金がないのは事実だが、それでも頑張ろうとしている。見くびられていると感じられ憤慨した」(要約)と話していた。後者の問題が生じていたのではないだろうか。

・問診票の中に職業と収入、家庭状況の欄をそれとなく忍び込ませる…のも当然倫理的にアウトだよなあ。その隣にコラムでこれぐらいの困り状況ならこれが使えると例を示して、「もし生活上のことでお困りならお気軽に本院SWへ!」と書いとくとか……どうか。

(東)