健康格差 第3章

担当:福富 2017/12/9

 

■プロセスこそ重要?➡結果も重要

ジャンケンによるケーキの分配。勝ちならもらえる、負けならもらえない。負けで全くもらえない場合、誰だって不満が残る。

 

■社会正義に対するどのアプローチが健康の不公平を理解するための枠組みと行動への機動力を与えてくれるのか?

この問題の解決のため、自らの環境が健康を悪化させている人々の生活をみてみる。

ギータ、ジミー、レイチェルの例

三人の共通点:社会経済的地位が上の人たちに比べて健康状態が悪い

➡健康の不平等の是正は社会正義の問題だと主張したい

 

案内役サンデル教授:社会正義への3つのアプローチ

  • 厚生を最大化する
  • 自由を促進する
  • 徳に報いる

この3つが「回避可能な健康の不平等」、つまり健康の不公平に対しどう適用されるかを見て行く。

 

■厚生の最大化*1

功利主義的計算(人々がテレビをどれだけ評価するか=人々がいくら支払う用意があるか、人の命1年分の価値=人々が寿命を一年伸ばすためにいくら払う用意があるか)

2つの問題点:命とテレビを同じ物差しで測っていること、分配*2

 

人々の命の価値に差はあるのか?:人々が同じ所得である必要はないが、裕福な人が貧しい人々よりも良い医療を受けることはあってはならない。 

 

■自由の促進

ジミー:幼少期のひどい境遇

自分の人生を変える自由がある?
マルクス「既存の、過去から与えられ、引き継がれた環境のもとで形作るのだ」

幼少期の支援があれば、、、人生を決定する大きな自由があった

三人:無力化、基本的な自由を欠いている。*3

エンパワーメント、自らが理性的に評価する人生を選択する自由

➡人生を変容、健康を改善

アマルティアセン「何かである自由、何かをする自由」

不健康は機会を意味のある結果に変換する妨げになる。

教育の成果をあげ、就業機会が増え、全般的な条件が良くなると、三人の健康は改善

 

■徳に報いる

勝者はそれに値する努力をした? だとしても…総取りでいいのか?

 

社会の資源の公平な配分は、個人の徳や卓越に報い、われわれの望む社会の性格に順応するかもしれない

善:意見が分かれる

財産の分配についての不正義:やはり意見が分かれる

健康の「分配」に関する不正義(健康格差):意見分かれないはず。誰でも格差があるのはよくないと思うはず。

 

所得の公平な分配?:実際調査をすると、人々は現状を不公平だと考えていて、徳には報酬があるべきだが限度があるべきと考えている。

 

貧困は自業自得?
貧しい人は無気力であるから不運や不健康をまねく
というよりも……貧困は拙劣な意思決定を招く*4

相対的貧困は洞察力をよわめ、将来の計画力とコントロールの感覚を衰えさせる

➡貧しい人には心の平安も必要!

*1:東: 費用対便益分析を一切拒否するのはあまりよくないのでは。

社会保障費がある程度決まっている中でどの健康政策を優先すべきかは費用対便益分析しないとわからない。また、若年者向けの政策は経済的に「割りが合わない」と切られてしまう可能性を危惧しているが、ものによっては投資として「割りに合う」ものが存在する。ペリー就学前プログラムとか。損失の面では日本財団の「子どもの貧困放置は長期的に40兆円の社会的損失(なので対策打つべし)」という報告とか。
一方で、予防政策はしばしば経済的に「割りに合う」といわれるが、たしか禁煙キャンペーンは割りに合わなかったような。肺癌にかからず長生きして色々病気をかかえるより肺癌で早死にする方が医療費がかからない、とかなんとか。
……教育と医療の性質の違いを反映しているのかもしれない。

*2:福富:最大多数の最大幸福だと費用のかかる少数が蔑ろにされる例が示されていて、公正性の原理が大事だとよくわかった。

*3:東: 喫煙者に「あなたの喫煙はあなたが決めた行動ではなく、社会であなたが占める位置によって“吸わされているのだ”」というのってプライドを傷付けるようなところがあるのでは。
天久: 昔は吸うことがかっこいい、当然吸うものという価値観があった。むしろ、喫煙者こそ“価値観”の影響力をよくわかっているかも?

*4:東: 貧困→不健康行動。お金や時間に余裕がないと「徹夜明け」なみに認知能力が落ちる。健康行動をとるには長期的な視野でもって自分の生活をコントロールしなければならないが、お金や時間の欠乏状況は人を誰しも近視眼的にする。もしあなたが自己コントロールに自信があるなら、それはあなたの性格によるものではなく、単に生活に余裕があるからかもしれない。