健康格差 序章
担当:東 2017/12/9
■せっかく治療した患者をなぜ病気の原因となった環境に戻すのか?
ex.
難民の腹痛に対する制酸剤
低い社会階層にいる人の生活習慣病
→ 対症療法ではなく、原因の原因cause of cause、問題の上流upstreamにある健康の社会的決定要因(social determinants of health)にアプローチすべき。
■健康の不平等
「人生の好機が不平等にやってくる結果、健康が不平等に配分されることになる。最も幸運な環境に生まれた人は、不幸な生まれの人に比べて健康な生活が19年以上延びる。不平等の底辺にいると、活力も生活のコントロールも奪われ、結果として健康が損なわれる。そして、この影響には勾配がある。ーー社会的に不利なほど、健康も損なわれる。」
社会経済的ステータスはスペクトラムになっており、誰もがどこかに位置付けられる。
もはや健康度の天井に達している上位1%でない限り、あなたは不平等の当事者だ。*1
■マーモット研究史
日本人移民研究:心臓病発生率
日本にいる日本人<ハワイにいる日本人<カルフォルニアの日系人<米国の白人。
環境(食生活、社会的な絆など)の健康への影響をみる自然実験となった。
ホワイトホール研究:公務員の死亡率
1978-1984の期間において、イギリス公務員制度の序列の最下層にいる男性は頂点にいる男性の4倍の死亡率。序列が下がるにしたがって健康状態が悪くなっていった。
*ポイント 裕福な国においても、社会的勾配は健康を害する。
マーモット・レビュー:国連委員会でSDHの報告書を書く→『公平な社会、健康な生活』2010出版。『欧州報告』2014出版。
職業性ストレスの発見:公務員の死亡率の社会的勾配には、一体、なにが効いているのか? 喫煙(下位の方が高率)、血漿コレステロール(高位のほうが若干高くなる)、肥満・高血圧(下位のほうが若干高い、緩やかな傾き)− これら全部集めても死亡率の社会的勾配の1/3しか説明できなかった。
ということは、社会的環境そのものが死亡率上昇に効いているにちがいない。
ここから職業性ストレスの学説が生まれた。
【職業性ストレス学説】 ストレスを引き起こすのは、仕事における要求の高さそのものではなく、要求の高さと裁量の低さである。ーー上位の人は、要求は高いが、裁量の余地も大きいため、ストレスが低い。
→さらに敷衍し、自分の生活に対するコントロールやエンパワメントの健康への関係へ
イデオロギーではなく事実や証拠に語らせたい。
世界の平均寿命は現在70歳で、日本の84歳からシエラレオネの46歳まで大きな開きがあり、全ての国がスペクトラム上に並んでいる。とはいえ、例えば、ネパールをみると、1980-2012までの間に平均寿命は20年伸びて、69歳となった。世界には健康の巨大な不平等が横たわっているが、意外と素早く改善できる部分もある。
→『一世代のうちに格差をなくそう』2008